車椅子ラック仕様トライクの製作
このたび、車椅子を積載できるトライクの製作をさせていただく機会がありました。
当店では過去にも何度か「車椅子ラック付きのトライク」の製作はしておりますが、
ホームページでご紹介したことは無かったので、今回はコラムとしてまとめてみました。
完全オーダーメイドの車椅子ラック
車椅子ラック仕様のトライク製作にあたり、オーナー様には何度も打ち合わせに来ていただきました。
一番最初の打ち合わせで重視したことは、オーナー様の話をお聞きすること(ヒアリング)です。
・車椅子のサイズ
・どのようにしたらトライクへの乗り降りがしやすいか
・どのようにしたら車椅子を載せやすいか(降ろしやすいか)
・ラックはどの位置にあると良いか
・他に必要な機能、あると便利な機能はあるか
・今回のご予算
などなど・・・。
オーナー様の負担感をできるだけ軽減するために、且つ、安全にトライクに乗れるように一番重要な打ち合わせと言っても過言ではありません。
車椅子のサイズや形状は、一人ひとり異なります。
そのため、毎回ワンオフ、いわゆる完全オーダーメイドでの製作となります。
今回のオーナー様は初めてのトライクでしたので、オーナー様のお話をお聞きしながら当店からも仕様についてのご提案もさせていただきました。
大枠の仕様が決まった2回目以降は、ラックの位置合わせや負担感の確認などでのご来店です。
オーナー様は大変だったと思いますが、
・トライクに乗る
・車椅子を載せる
・車椅子を降ろす
・トライクから降りる
このような動作を実際に試して頂くことは非常に重要です。
一度製作した車椅子ラックを、何度も何度も作り直し、位置や角度を数センチ単位(場所によっては数ミリ単位)で調整。
その都度、オーナー様にはご来店いただき、乗り降りの確認。
結果的にはご納車までに4回もご来店いただきましたが・・・できる限り負担感の軽減をすること、且つ安全性を重視する上では避けられない事だと考えています。
車椅子ラックの仕様について
今回は前述のとおり、完全オーダーメイドのトライク・車椅子ラックになっております。
ラックのサイズは、当然オーナー様の車椅子にピッタリと合うように製作しておりますが、他にもオーナー様の使い勝手や安全性を考慮した機能・仕様になっています。
上下可動式の車椅子ラック
車椅子ラックは上下可動式です。
これは、オーナー様がトライクに乗り降りする時にラックが邪魔にならないようにするためです。
車椅子からシートに移動する時(また、シートから車椅子に移動する時)には、ラックを上げておくことで移動がしやすくなるという事ですね。
また、
・乗車後に車椅子を載せる時
・降車前に車椅子を降ろす時
はラックが下がっている状態の方が、積み降ろしが楽になります。
そのため、上下可動式にすることでオーナー様の負担を軽くすることができるという訳です。
なお、この上下稼働に関しては電動式にすることも可能です。
ただ、どうしてもコストが掛かってしまいますので、今回はオーナー様との相談の上で手動式にて製作しております。
手動式で製作すると決まった時に、当店のテーマとしては「片手で全て完結する」ことでした。
上下稼働時に役立つガスダンパー
車椅子ラックは金属製です。
もちろん、できる限り軽量化を図りますが強度も加味しなくてはなりません。
軽さと強度の絶妙なバランスを追求しましたが、
「片手で完結する」には、やはりそれなりの重量感は否めません。
そこで「ガスダンパー」を装備しました。
このダンパーのおかげで、重そうな車椅子ラックが・・・なんと「小指一本」で楽々持ち上がるようになっています。
また、このダンパーはラックを「降ろす時」にも重要な役割を果たします。
ラック自体は金属製ですから、そのまま降ろすと「ガッシャン!」となってしまう事は容易に想像ができるのではないでしょうか。
ただ、ダンパーを付けることによって衝撃を抑制し、
ソフトにゆっくりラックを下げることができるのです。
車幅の被視認性を上げるLED
車椅子ラックには、LEDも付けました。
これは、対向車など周囲からの被視認性を上げるため。
夜間や日が落ちて暗くなった際に、車椅子のラックの幅が周囲から把握しにくいと、危険が生じます。
LEDを点灯することで、「ここまで車幅がありますよ」と周囲に認識させることが可能になります。
また、細かい事ですが、LEDの配線はパイプの中通しになっています。
配線が外にあると、車椅子を載せたり降ろしたりする際に、配線が傷付き断線する可能性あるからです。
もちろん、中通しの方が「見た目の良さ」でも圧倒的に優れていますね。
バックギアとパーキングブレーキ
今回はバックギアも装備しています。
2輪でもホンダのゴールドウイングなど、一部の車種でバックができるモデルがありますが、これらはセルモーター(電気)の力を利用してバックする方式です。
このような方式を取り入れることも可能ですが、コスト面やバッテリー消費が大きい等のデメリットもあります。
そこで、駆動軸を逆回転させる歯車(バックギア)が組み込まれているトライクキットを使用することにしました。
バックギアの切り替えはレバー操作になりますので、
オーナー様に実際に操作して頂きながら、どこにレバーがあれば操作しやすいかを確認・位置調整をしております。
また、今回のベース車(スカイウェイブタイプS)は元々パーキングブレーキが付いている車種です。
しかしながらトライク化することで、トライクキットに対応するように引き直し作業も行っております。
車椅子の乗り降りの際に、車体が動かないようにパーキングブレーキも必須の機能です。
(※当店製作のトライクは、基本的に全車パーキングブレーキ標準装備です)
その他の機能や仕様
他にも、乗車中の足を安定させる補助バンドや、シートには体を安定させるための腰ベルトなども装備させていただきました。
トライクキットは独立懸架式です。
少しコストが掛かるキットですが、左右それぞれが独立して動くタイプの為、操作性や車両の安定性に優れています。
また、車椅子ラックに関しては、車体に溶接ではなく敢えてボルトオンで外せるようにしました。
これは、トライクを手放す時のリセールのしやすさや車椅子が変わったときの再製作のしやすさを考慮したと言う訳です
(溶接してしまった方が作業としては楽だと思います。)
他にも細かいところで言えば多々ありますが、こうしてオーナー様と一緒に作り上げたトライクが完成しております。
オーナー様がこれからトライクライフを楽しんで頂ければ、当店としては嬉しい限りです。
オーナー様にも、改めてお礼申し上げます。